ゆ〜ゆ本誌にて2013年まで連載していた「お風呂の四方山話」が令和版「温泉・温浴の四方山話」として復活! 愉湯太郎が伊豆高原の秘密基地よりお届けいたします。「風呂超爺・太郎の二拠点生活blog」とあわせ、ぜひお楽しみください(編集部)。
都市部の温泉、かけ流しの是非
「温泉は源泉かけ流しでなくっちゃ~~!!」という温泉ファンは多いでしょう。昔ながらの温泉地ならまだしも、都市部の温浴施設もかけ流しが良いと思っていませんか?
確かに湯量豊富な温泉で湧出温度が入浴に適している温度であり、さらに溢れた温泉を河川放流できるのであれば下水代などのコストがかからずに提供できますから可能ですが、都市部の温泉でこれをやったらコストがかかり過ぎて大変です。
それに、都市部の温浴施設では、衛生面から湯舟のお湯は濾過・消毒して循環させるよう保健所から指導されていますし、浴槽のお湯の換水頻度についても指導されています。「それが何か??」と思われる方、いいですか……
さて、1時間に湯舟のお湯が何回入れ替わるのか?
これをターン数と言うのですが、普通の浴槽でもお湯は動くと熱を奪われますので、ターン数を増やすということは昇温コストがかかります。ですから、利用者数に比例する浴槽の中のお湯の汚れ具合でターン数を調整します。
「じゃあ、やっぱりかけ流しがきれいでは?!」と思われるかもしれませんが、一概にそうとは言えません。「循環はしていません! うちは源泉かけ流しです!」と謳って湯口から常に新しい温泉を供給していますという都市部の温泉の分析表を見ると、(この湧出温度あるいは湧出量でかけ流し出来るの?)と不安になってしまうことがあります。浴槽の大きさにもよりますが、湯口からちょろちょろでは(衛生的な水質を維持することは難しいのでは?!)と心配になってしまうのです。
歳を取るといろいろな知識がかえって不安要素になってしまう今日この頃です……
諸星 敏博
有限会社ライフラボ代表 / 一般社団法人 温浴振興協会 代表理事
1953年生まれ。温泉大国長野県で身近に温泉を感じながら子ども時代を過ごす。その影響か、「温泉を楽しむこと」がライフワークに。1990年~2000年代にかけて起きた温泉ブームに、より多くの人に温泉に親しんで欲しいという思いから「お風呂で得するフリーマガジン ゆ~ゆ」を創刊。その傍ら、より安全に気軽に温泉を楽しめるよう各温浴施設のコンサル業務も行い、現在までに50数施設の支援に当たっている。