温泉・温浴の四方山話「第18回・オーバーツーリズム」

温泉・温浴の四方山話「第18回・オーバーツーリズム」
ゆ〜ゆ本誌にて2013年まで連載していた「お風呂の四方山話」が令和版「温泉・温浴の四方山話」として復活! 愉湯太郎が伊豆高原の秘密基地よりお届けいたします。「風呂超爺・太郎の二拠点生活blog」とあわせ、ぜひお楽しみください(編集部)。

外国人観光客の増加と温浴施設

 数年前、政府は外国人観光客の誘致を奨励し、それ以降、外国人観光客(いわゆるインバウンド)が飛躍的に増加しました。国内のさまざまな業界が誘致に尽力しました。もちろんお風呂屋さんも例外ではありません。日本の入浴文化や温泉は外国人にとっても興味の対象であり、「日本に来てしたいこと」の上位に常にランクされていました。

 しかしながら、多くの温浴施設ではタトゥーに関する入浴制限がありました。政府からは「外国人だけでも入浴可にしたら……」なんていう無謀な意見も出ました。当時はさまざまな報道関係者からこの問題についての取材を受けましたし、セミナーの講師依頼もたくさん来ました。一部ではタトゥーを隠すことで入浴可能とした施設もありましたが、概ねタトゥーを入れた方の入浴は従来どおり不可としました。

 その直後、コロナ禍に見舞われ、この問題は忘れ去られてしまいました。今年に入って、インバウンドが再び増加し、再燃するのではないかと思いましたが、意外や意外、外国人観光客はSNSなどで日本の温泉の利用方法に関する情報を入手しており、現場で大きなトラブルは起きていないようです。

 現在、外国人観光客の増加を受けて、「オーバーツーリズム」という現象が他の観光国の状況とともに報道される機会が増えています。1970年代、日本人が大挙して海外旅行に行き始めた頃、その行動は批判されました。現地のマナーやルールを知らなかったことによるものが多いように記憶しています。地域住民の生活を脅かすような人数が大挙して来るような地域の問題は別として、その多くは「日本のルールやマナー、そして根底にある価値観」を共有できれば解決できるのではないか……と思う今日この頃です。

 日本には「郷に入っては郷に従え」という教えがあります。外国人も日本の良さを理解して楽しんでいるようです。温浴施設はいい例かもしれません。


風呂超爺・太郎の二拠点生活blog

諸星 敏博

有限会社ライフラボ代表 / 一般社団法人 温浴振興協会 代表理事

1953年生まれ。温泉大国長野県で身近に温泉を感じながら子ども時代を過ごす。その影響か、「温泉を楽しむこと」がライフワークに。1990年~2000年代にかけて起きた温泉ブームに、より多くの人に温泉に親しんで欲しいという思いから「お風呂で得するフリーマガジン ゆ~ゆ」を創刊。その傍ら、より安全に気軽に温泉を楽しめるよう各温浴施設のコンサル業務も行い、現在までに50数施設の支援に当たっている。


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